1)45年前の高校野球
Dr.TANREXは発明者、山花が経験した高校野球のトレーニングに起因する。46年前の高校野球は軍隊と刑務所を合わせたような厳しさがあり、特に冬場のオフシーズンは「裸足ランニング」という過酷を極めた練習があった。
21時に練習は終了するのだが、そこから先は「自主トレ」という名目で「強制トレーニング」。その一つが裸足ランニングだった。
Dr.TANREXの発明は、この「裸足ランニング」が原点となった。
2)体の軸を実感
冬場の裸足ランニングから開放された翌春、前の年には無かったスピード感を練習中に感じた。ホームベースから一塁ベースを駆け抜ける直前に「あれっ!いつもと違う!」と実感した。90度の角度を全速で駆け抜けると普通は減速してしまうのだが、それが全く無く、直線を駆け抜けるように二塁ベースに向けてドンドン加速していった。
バッターとして打席に立ってピッチャーの投げる球を打った時は、軸足になるキャッチャー寄りの足にはまるで杭を打ち込んだかのようなしっかりとした回転の中心軸を体感した。
ナゼ?何故?どうした?
考えた結果、「親指」に辿りついた。「親指が地面に向けて杭打ちをしている…」だった。
つまり、凸凹座面を走る際に、靴では足首のふらつきが守られているが、裸足では凸凹地面がふらつきを増してくる。そのため、親指を地面に食い込ませることで足首のふらつきを安定制御させていたのだ。
この親指の使い方こそが体を支える基本であり、アスリートが言う「体の軸」の正体ー。
ドクタータンレックスの原点はこのようにして生まれた。
3)5本指ソックスと裸足ランニングの偶然
私が大学卒業後就職した会社は、ゴム手袋メーカーだった。新入社員の研修講義で軍手の編み機を応用した5本指ソックスを開発したとの話が持ち出された。
5本の指がついたソックスだと聞かされた瞬間、高校野球時代の裸足ランニングが脳裏を駆け巡り「このソックスの底にゴムシートを張り付ければ、5本指裸足シューズができる!」と勝手な妄想抱いてしまった。こうなってしまうと講義どころの話ではなくなり、試作品をどうやって作るか?で私の頭は埋め尽くされた。
新入社員の立場を忘れてしまい新製品開発に足を突っ込もうとするわけだから、社員研修担当者も黙っちゃいない。私は大説教を食らい一件落着、幕引きとなる。
しかし諦め切れず、事あるごとに裸足の効果と5本指シューズの可能性を喋りまくり、変人扱いされる人生を歩みだした。
4)大手スポーツメーカーから5本指シューズが発売
ドクタータンレックスの原点は裸足ランニングであり、商品イメージは5本指シューズだったことは先に説明した通り。
2010年にBarefootinc Japan株式会社が日本でのビムラム5本指シューズ総代理店となり日本での展開が始まる。
1982年にタンレックス発明者山花が手袋メーカーで発案した5本指シューズが22年の歳月を経てイタリアから発売された。
このニュースを見た瞬間、新入社員だった頃に5本指ソックスで騒ぎ立てたあの頃が蘇る。
当時所属していた手袋メーカーの大学共同研究から情報が漏れ、スポーツメーカーに5本指シューズ発売が先を越されたことが発覚。
共同研究をした大学教授が先走りで学会発表をしてしまっていた。学会に出席していたスポーツメーカー各社(アシックス、ミズノ等)が競ってそれを開発し、その先発がイタリアのビムラム社だった。
5)再挑戦
アシックス、ミズノ、ビムラム、世界を相手に立ち回る大企業が5本指シューズを発売したことに対して悔しい思いはあった。しかし自分のアイデアが世界に通じたという嬉しさの方が強かったのかも知れない。意外にサッパリとした気持ちで受け入れることができた。
夢を語るだけでは何の価値も無い、動いてなんぼの現実を突き付けられ、甘っちょろい自らを猛省する。
先ずはビムラムの5本指シューズを買って履いて自ら体感することから始めることにした。
さすが世界のスポーツメーカーが開発しただけのことはある。裸足感覚に拘った伸縮性と指の独立機能が活かせる構造には技術力の高さがうかがえ、悔しさを通り越しリスペクトの域へ。
毎日ビムラムの5本指シューズの試し履きをした結果、2つの疑問点を発見。
①指の長さと指又の深さは人それぞれなのに、一定の型に足指を合わせている不自然さ。
②膝と腰への衝撃が強い
特に膝と腰はアスリートであれば問題はないが、一般の人にとっては歩き方、走り方の指導が必要となる。日常の歩き方(カカト重心)では膝関節と腰を痛める可能性が見えてきた。
この問題を解決するには?
を考えている内に「まだチャンスがあるかも!」に考え方が変化し、「寝ても覚めても」が始まる。
甘っちょろい人生との決別。再挑戦への意志を固める。
鈴木コメント:
冬場の裸足ランニングが原点とは、まるで大映ドラマ。野球漫画だと『キャプテン』を思い出すなー。
三分の一打法。
山花氏は『キャプテン』を漫画の・アニメ共に見ていないとのことなのでちょっぴり残念。
完全に『巨人の星』の方ですものね。ジェネレーションギャップ?ただの好み違い?
共同研究をした大学教授が先走りで学会発表を発表してしまったなんて、私だったらその教授許すまじ!となってしまう。
悔しさを引きずらずに自分のアイデアが世界に通じたという嬉しさの方が強く意外にサッパリとした気持ちで受け入れることができたとは、山花氏、どんだけ前向きなんだと驚きました。
タンレックスの靴底は、5本指シューズ先発のイタリアのビムラム社の靴底を使用しています。
ビムラム社の靴底は登山靴で培われた抜群の強度とのこと。山花氏は良いものをタンレックスに取り入れているあたり、製品に対する敬意と良いものを見抜く目をお持ちなんだと感じ入りました。